米・視覚障害をもつ大学生らが通販サイト運営会社を提訴

13日付CNET Japan記事においてアメリカでアクセシビリティをめぐる訴訟が提起されていることが報じられた。
CNET Japan記事

この訴訟は通販サイトTarget.comを運営するTarget社に対して、カリフォルニア州に住むBruce Sextonという24歳の大学生と視覚障害者支援団体(National Federation of the Blind :NFB)が共同で起こしたもの。記事によると原告側はTarget.comにはアクセシビリティ上の問題があり、ADA(障害を持つアメリカ人法)を採用するカリフォルニア州法に違反していると主張している。

Webサイトのアクセシビリティをめぐる過去の訴訟では同NFBがAOLに対して起こした訴訟や、視覚障害者の擁護団体がサウスウェスト航空に対して起こした訴訟がある。

争点は過去の訴訟同様、WebサイトがADAの規定する「公共施設(place of public accommodation)」に該当するかどうかであると思われるが、判例はこれを否定している。

今回訴訟を起こされたTarget社のサイトは一般的な通販サイトであり、過去に起こったAOLやサウスウェスト航空のケースと比べると公共性は低く、ADA違反が認められる可能性は少ない。

ではなぜNFBは今回勝てる見込みの少ない訴訟を起こしたのだろうか。

過去の訴訟においてADAの違反は認められなかったものの、社会的な関心の高まりを受けて、訴訟を起こされた企業はその後自社のWebサイトをアクセシビリティを確保したものに改善せざるを得なくなった経緯がある。

今回のケースもNFBが訴訟に踏み切ることで社会的な関心を高め、Target社のサイトをアクセシビリティを確保したものに設計し直させる意図があるものと思われる。

海外CNET Networksの記事では原告側の意図を示す内容が掲載されている。以下はその翻訳・引用。

原告の弁護士でボルチモアに拠点を置く弁護士Daniel Goldsteinは、この訴訟のより大きな目標は比較的安価に改善できるウェブサイトのアクセシビリティ問題について企業を教育することだ、と述べた。また彼はそうするための経済的理由があると付け加えた。ベビーブームに生まれた視覚障害者でウェブを利用する消費者が増加しているというのがその理由だ。「私たちは小売業者がより多くのお金を稼ぐようにせまっているだけだ。」


過去に起こったWebアクセシビリティに関する裁判

AOL訴訟(NewYorkTimes 1999年11月記事 :英語)
1999年11月提訴。2000年7月AOLが今後開発するソフトを視覚障害者が利用しているスクリーンリーダーに対応するということで和解。

サウスウェスト航空訴訟(CNET Japan 2004年9月記事)
2002年下級裁、2004年控訴裁ともに「企業は運営するウェブサイトについて、ADAを遵守する義務を負わない」との判決を下した。


追記:2006年11月17日
以下で訴訟の進展と経過が報じられている。

「視覚障害者に優しくないサイト、提訴される」 ITmedia News 2006年10月26日記事

Target.com lawsuit moves forward」 WebAIM Blog 2006年9月8日記事(英語)

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